目次
- ほとんどの歯列矯正は基本的に保険適用外となる
- 歯列矯正が保険適用となるケース
- 顎変形症の手術前後の矯正歯科治療
- 前歯・小臼歯の永久歯3歯以上の萌出不全による咬合異常
- 連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常(18歳未満)
- 厚生労働大臣が定める特定の疾患
- 保険適用の歯列矯正は医療機関・矯正装置に制限がある
- 保険適用の歯列矯正について
- 保険適用となった場合の費用目安
- 保険適用されるまでの流れ
- 保険診療の歯列矯正を行う医療機関の探し方
- 歯列矯正が保険適用外なのはおかしい?自由診療となる理由
- 保険適用以外で歯列矯正の費用を抑える方法
- 歯列矯正の保険適用についてのよくある質問
- Q:子供の歯列矯正は保険適用されますか?
- Q:歯列矯正は将来的に保険適用となる可能性はありますか?
- まとめ
「歯列矯正をしたいけれど、健康保険は使える?」
「子供の噛み合わせが悪い場合は保険適用になる?」
近年、歯並びへの意識の高まりから、歯列矯正を検討される患者様が増えてきています。
実際には、歯列矯正は子供・大人など年代に関係なく、自由診療(自費診療)となることがほとんどですが、一部の限られたケースでは保険適用となることがあります。
この記事では、歯列矯正が保険適用となる条件、対象となる疾患、保険適用の場合の費用目安、治療を受けられる医療機関の探し方まで、詳しく解説します。
保険適用とならない場合に負担を抑える方法もあわせてご紹介しますので、歯列矯正をご検討中の方はぜひ記事をチェックしてみてください。
ほとんどの歯列矯正は基本的に保険適用外となる

結論からお伝えすると、日本で行われている歯列矯正のほとんどは健康保険の対象にならず、全額自己負担の自由診療となります。
多くの一般的な不正咬合は、噛みにくさや発音のしづらさがあっても、残念ながら保険診療の対象外となるのが現状です。
歯列矯正が保険適用となるケース

歯列矯正は、国が定めた以下の一定の条件に当てはまる場合に限り、保険診療として治療を受けることが可能です。
- 顎変形症の手術前後の矯正歯科治療
- 前歯および小臼歯の永久歯3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常
- 連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常
- 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
ここから、それぞれ詳しく解説します。
顎変形症の手術前後の矯正歯科治療
顎変形症とは、上顎や下顎の骨の大きさ・形・位置などの異常により、噛み合わせの異常や顔の変形などが生じる疾患です。
顎変形症と診断され、顎の骨を切る外科手術の併用が必要と診断された場合に、術前矯正と術後矯正の両方が保険適用となります。
受け口(下顎前突・反対咬合)や出っ歯(上顎前突)、開咬(オープンバイト)で骨格的要因が大きい場合は顎変形症が影響しているケースもあるため、まずは一度専門的な診査を受けることをおすすめします。
前歯・小臼歯の永久歯3歯以上の萌出不全による咬合異常
本来生えてくる時期を過ぎても、永久歯が生えてこない状態を「萌出不全」と呼びます。
前歯や小臼歯(前から4番目と5番目の歯)の永久歯のうち3歯以上が生えてこないために噛み合わせに異常が生じ、「埋伏歯開窓術」という手術が必要と判断された場合は、歯列矯正に保険が適用されます。
前歯や小臼歯の永久歯がないと噛む機能や発音に影響するため、歯茎を切開して埋まっている歯を引っ張り出す治療を行います。
連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常(18歳未満)
2026年度(令和8年度)の診療報酬改定により、歯列矯正の保険適用範囲が広がりました。
これにより、18歳未満の患者様で連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因する咬合異常が認められるケースでも歯列矯正に保険が適用となります。
先天的に生えてこない歯が多いほど、歯並びだけでなく顎や顔の骨の成長にも大きな影響が出ることがわかっています。
特に、欠けている歯が3本以上ある場合は、2本以下の場合よりも影響が大きいことが示されており、できるだけ早い段階で治療を検討することが必要な症例です。
(参考:厚生労働省・中央社会保険医療協議会(中医協)総会『歯科医療その2』)
(参考:厚生労働省保険局医療課『令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】』)
厚生労働大臣が定める特定の疾患
ここまで紹介した症例のほか、以下の「厚生労働大臣が定める特定の疾患」では症状の一つとして歯や顎に異常が起こることがあり、これらの疾患をお持ちの方は歯列矯正に保険が適用されます。
- 唇顎口蓋裂
- ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
- 鎖骨頭蓋骨異形成
- トリーチャ・コリンズ症候群
- ピエール・ロバン症候群
- ダウン症候群
- ラッセル・シルバー症候群
- ターナー症候群
- ベックウィズ・ウイーデマン症候群
- 顔面半側萎縮症
- 先天性ミオパチー
- 筋ジストロフィー
- 脊髄性筋委縮症
- 顔面半側肥大症
- エリス・ヴァンクレベルド症候群
- 軟骨形成不全症
- 外胚葉異形成症
- 神経線維腫症
- 基底細胞母斑症候群
- ヌーナン症候群
- マルファン症候群
- プラダー・ウィリー症候群
- 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
- 大理石骨病
- 色素失調症
- 口腔・顔面・指趾症候群
- メビウス症候群
- 歌舞伎症候群
- クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
- ウイリアムズ症候群
- ビンダー症候群
- スティックラー症候群
- 小舌症
- 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
- 骨形成不全症
- フリーマン・シェルドン症候群
- ルビンスタイン・ティビ症候群
- 染色体欠失症候群
- ラーセン症候群
- 濃化異骨症
- 6歯以上の先天性部分無歯症
- CHARGE症候群
- マーシャル症候群
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症
- ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
- リング18症候群
- リンパ管腫
- 全前脳胞症
- クラインフェルター症候群
- 偽性低アルドステロン症
- ソトス症候群
- グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
- 線維性骨異形成症
- スタージ・ウェーバ症候群
- ケルビズム
- 偽性副甲状腺機能低下症
- Ekman-Westborg-Julin症候群
- 常染色体重複症候群
- 巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)
- 毛髪・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)
- クリッペル・ファイル症候群(先天性頸椎癒合症)
- アラジール症候群
- 高IgE症候群
- エーラス・ダンロス症候群
- ガードナー症候群(家族性大腸ポリポージス)
- その他顎・口腔の先天異常
- 原発性低リン血症性くる病
- ロイス・ディーツ症候群
引用:公益社団法人日本矯正歯科学会『矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは』
公益社団法人日本矯正歯科学会のHPに掲載の疾患に加え、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定で新たに「原発性低リン血症性くる病」「ロイス・ディーツ症候群」が追加となっています。
保険適用の歯列矯正は医療機関・矯正装置に制限がある
歯列矯正を保険適用で受けられる医療機関は限られており、どこでも保険で歯列矯正を受けられるわけではありません。
保険診療として矯正治療を行えるのは、厚生労働大臣が定める施設基準を満たし、地方厚生(支)局長に届出を済ませた指定医療機関のみです。
指定医療機関は、対象となる症例によって以下のように分かれています。
| 施設基準の略称 | 正式名称 | 対応する症例 |
|---|---|---|
| 矯診 | 歯列矯正診断料 | 厚生労働大臣が定める疾患/永久歯萌出不全 |
| 顎診 | 顎口腔機能診断料 | 顎変形症(外科手術を伴うもの) |
また、現状では、保険適用の歯列矯正で使用する矯正装置は定められたものに限られ、マウスピース型矯正装置は対象外となります。
保険適用の歯列矯正について

ここからは、保険適用の歯列矯正について費用や流れなどについて解説します。
保険適用となった場合の費用目安
保険診療となった場合、窓口での負担は原則3割(年齢や所得により変動)になります。
顎変形症の外科矯正(外科手術+歯列矯正)は自由診療の場合100万円以上かかるケースも多いですが、3割負担であれば40万〜60万円ほどと、大幅に費用を抑えられます。
保険適用されるまでの流れ
保険診療の歯列矯正は、基本的には以下のような流れで診断・治療へ進みます。
- 保険診療で歯列矯正を行える医療機関に相談する
- 診察・精密検査を受ける
- 検査結果をもとに診断を受ける
- 治療計画や保険適用について説明を受ける
- 保険適用の要件を満たす場合、医療機関の案内に沿って治療を開始する
治療開始までの期間は、検査内容や症例、医療機関によって異なります。
保険診療の歯列矯正を行う医療機関の探し方
保険診療の歯列矯正が行える医療機関は、地方厚生(支)局が公開している名簿から確認できます。
以下のような手順で調べてみましょう。
- 自分の住んでいる地域の地方厚生(支)局のサイトにアクセスする
- 画面右上のサイト内検索欄に「施設基準届出受理医療機関名簿」と入力する
- 「施設基準等の届出事項(届出受理医療機関名簿)」のようなタイトルのリンクをクリックする
- お住まいの地域の「歯科(PDF)」と書かれたリンクをクリックして表示する
- 「矯診」または「顎診」の記載がある医療機関を探す
実際の受診前には、対象疾患に対応しているか電話で問い合わせておくと二度手間を防げます。
歯列矯正が保険適用外なのはおかしい?自由診療となる理由

「噛み合わせが悪いのは機能の問題なのに、保険適用されないのはおかしい」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
歯列矯正が自由診療となるのは「日本の公的医療保険のルール」に関係しています。
日本の公的医療保険は、病気やケガを元の健康な状態に戻すための治療費の負担を軽くする仕組みです。
医療費の財源には限りがあり、公的医療保険の対象となる治療には一定の範囲が定められているため、一般的な歯列矯正や、予防接種などの予防的な医療は基本的に保険適用外となるのです。
保険適用以外で歯列矯正の費用を抑える方法
歯列矯正が保険適用にならなかった場合でも、費用の負担を軽減する方法はいくつかあります。
医療費控除を利用するほか、治療方法や料金体系を比較することで、治療にかかる費用を抑えられる可能性があります。
また、デンタルローンや分割払いを利用すれば、治療費そのものを安くすることはできなくても、一度に支払う金額を抑えることが可能です。
| 方法 | 詳細 |
|---|---|
| 医療費控除を利用する | 治療目的の歯列矯正であれば、医療費控除の対象となる場合がある |
| デンタルローン・分割払い・院内分割を利用する | 支払いを複数回に分けることで、一度にかかる負担を抑えられる |
| 費用を抑えられる治療法を選ぶ | 矯正装置によって費用が異なるため、適応となる治療法の中から比較する |
| 部分矯正(MTM)ができる症例か確認する | 部分矯正で治療できる場合、全体矯正より治療範囲が狭くなり費用を抑えられることがある |
| 治療開始のタイミングを見極める | 症例に適した時期に治療を始めることで、必要以上の費用負担を避けられる可能性がある |
| トータルフィー制のクリニックを選ぶ | 治療開始前に総額を把握しやすく、想定外の追加費用を防ぎやすい |
| 複数のクリニックで見積もりを比較する | 装置代だけでなく、検査料・調整料・保定装置などを含めた総額を比較できる |
医療費控除やそのほかの歯列矯正の費用負担を抑える方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
▶歯科矯正したいけどお金がない!今すぐ治療を始める方法と負担を抑える対処法
▶歯列矯正は医療費控除の対象?大人&子どもの条件・いくら戻るか・やり方を解説
歯列矯正の保険適用についてのよくある質問

ここからは、歯列矯正の保険適用についてよくある疑問をご紹介します。
Q:子供の歯列矯正は保険適用されますか?
A:子供の場合も大人と同じく、保険適用となるのは厚生労働大臣が定める疾患・永久歯萌出不全・外科手術を要する顎変形症などに該当する場合に限られます。
保険適用とならない場合でも、小児矯正は医療費控除の対象として認められやすい傾向にあり、制度を利用することで実質的な負担を抑えることは可能です。
Q:歯列矯正は将来的に保険適用となる可能性はありますか?
A:現時点で「歯列矯正は将来的に保険適用となる」と断言はできませんが、対象範囲が少しずつ広がってきていることは事実です。
2024年6月には学校歯科健康診断で歯列・咬合の異常(要精検)を指摘された場合は矯正相談が保険で受けられるようになったほか、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定では歯科矯正の保険適用範囲が拡大されました。
山梨県や京都府などでは保護者や医療団体が中心となり、子どもの歯列矯正への保険適用拡大を求める請願活動も行われています。
一方で、財源や審美目的との線引きの難しさの問題もあります。今後も診療報酬改定などの動向を確認する必要があるでしょう。
(参考:東京歯科保険医協会『第12回 歯科矯正への保険適用今後の動向に注視を』)
まとめ
歯列矯正は原則として自由診療ですが、厚生労働大臣が定める疾患や一定の永久歯萌出不全、顎変形症などに限り、保険適用となる場合があります。
ほとんどのケースでは保険適用外となりますが、自由診療でも医療費控除や治療方法の検討、デンタルローンなどを利用することで、負担を抑えて治療を始めることは可能です。
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「自分にはどの治療が合う?」「費用は総額でどのくらい?」と気になっている方は、ぜひ一度カウンセリングでご相談ください。